「若おかみは小学生!(劇場版)」は2018年9月21日公開の劇場アニメ。原作は児童文学シリーズの小説。
交通事故で両親を亡くした小学生のおっこ(関織子)が祖母の営む旅館で若女将をしながら、様々な出会いと別れを通し成長していく物語。
◆ジャンル&キーワード
ドラマ、青春、ファンタジー、日常、温泉旅館、小学生
◆おすすめ度
★★★★★(星5)
◆こんな人にお勧め
- 温かい気持ちになりたい人
- おっこの頑張りを見たい人
- ジブリ作品が好きな人
- 家族でアニメを見たい人
目次
総評
両親を事故で亡くし温泉旅館の若女将となったおっこの成長物語で、哀しさの中にじんわりと心が温かくなる作品。
児童文学原作なので完全に子供向けに思えるが、しっかりしたストーリーとジブリ作品の様な雰囲気で大人も十分に楽しめる。
是非家族で見て欲しい。
主人公のおっこ(関織子)が、明るく元気で無邪気な良く動くキャラなので観ていて楽しい。
子供っぽい一面を持ちながら若女将として旅館で働く様はとても微笑ましいものがあり応援したくなる。
TV版ではあまり触れなかった、おっこの両親が亡くなる事とそこからのおっこの成長が描かれ、心の傷を乗り越えるおっこにグッと来るものがある。
幽霊のウリ坊と美陽、鬼の鈴鬼といったファンタジーな存在がコミカルで面白く、作品全体を盛り上げてくれる。
両親を亡くしたおっこの成長物語と云うほろ苦い題材ではあるが、彼らの存在やおっこの明るさで観ていて幸せな気分になれる。
劇場公開作品なので流石に作画は綺麗で、四季折々の花の湯温泉の景色が楽しめる。
注意:ここからは、ネタバレありです。
ストーリー紹介(ネタバレあり)
Story#1:プロローグ
両親と共に花の湯温泉で神楽を見物するおっこ(関織子)。
両親とも神楽に憧れていたとおっこに語り、楽しい一時を過ごす。
祖母の旅館が忙しく寄らずに帰るおっこ家族。
母は帰りの高速道路でおっこが神楽を踊る所を見てみたいと言う。
その時、反対車線を越えてきたトラックに車が激突。
おっこは車外に放り出されるが、色黒の少年の幽霊に助けられる。
事故で両親が亡くなり、祖母が営む花の湯温泉の温泉宿「春の屋」に引っ越したおっこは、自室で宙に浮く事故の時に見た色黒の少年の幽霊と出会う。
自分が見えている事に驚きおっこに自己紹介する幽霊のウリ坊は、祖母の事を峰子ちゃんと呼び古い知り合いだと言う。
幽霊のウリ坊と出会うおっこ
祖母から仲居のエツ子さん、料理人の康之介さんを紹介されるおっこ。
ウリ坊に「跡継ぎはお前だけ、若女将になるんや」と言われたおっこは、「え?跡継ぎ?若女将?」と口に出してしまい、成り行きで若女将修行が始まる。
若女将の件でウリ坊から礼を言われたおっこは、その夜マンションの寝室で眠る両親の布団に潜り込む夢を見る。
翌朝、物置から聞こえる鈴の音が気になったおっこは、タンスにしまってある箱を開け鬼の顔をした鈴を発見、祖母に鈴を見せる。
鈴は1000年続く瓦職人から祖父が貰った物だと言う祖母は、箱の下にあった昔のアルバムを発見する。
おっこと共に昔の自分のアルバムを見る祖母は、一緒に写るウリ坊を命の恩人で仲良しだったと語り、今どうしているのかと懐かしむ。
女将の修業を始めるも失敗続きのおっこは旅館の仕事の大変さを知る。
転校する前日、先生に挨拶するために着飾る両親の夢を見る。
Story#2:春
転校先で自己紹介するおっこは、ピンクでフリフリファッションの秋好旅館の跡取り娘秋野真月に、春の屋の嫌味を言われるも物おじせず言い返す。
クラスの皆から凄いと言われるおっこだったが、少女の幽霊から悪戯を受ける。
おっこに嫌味を言い煽るピンフリこと秋野真月
学校の帰り道、息子(あかね)が熱を出し困っている父子の旅行者を発見したおっこは、ウリ坊に促され春の屋にお客として連れて行く。
あかねとその父親を部屋に通す女将とおっこ。
先月母親が亡くなり元気がないと云うあかねに、おっこは自分も両親を亡くしていると言い、あかねを元気付けようとするが捻くれたあかねと喧嘩になってしまう。
客と喧嘩した事を女将から怒られるおっこは、夜女将と共にあかねに謝りに行く。
熱が下がったあかねはケーキが食べたいと言い、おっこは町に買いに行くがどこも閉まっていた。
ケーキが手に入らなかったおっこは代わりに厨房で温泉プリンを作るもあかねに食べてはもらえなかった。
その夜、両親が温泉プリンを食べ美味しいと言っている夢を見るおっこ。
おっこに刺激され元気になったあかねは、帰り際に温泉プリンを食べておいしかったとおっこに告げる。
おっこはお客に喜んでもらえる旅館の仕事を楽しいと思うようになる。
元気になりおっこに礼を言い春の屋を後にするあかね
女将の使いで外に出るおっこは、秋好旅館のスタッフと大量の鯉のぼりを設置している真月を見かける。
そこに学校に現れた少女の幽霊がちょっかいを出してきて、追いかけるうちにウリ坊とおっこは春の屋に戻ってきてしまう。
真月の姉美陽であるという少女の幽霊は、春の屋を気に入り旅館に居る鬼の存在をおっこに教える。
タンスの中にあった鈴の封印を解いてしまっていたおっこ。
見つけた鬼は鈴鬼(すずき)と名乗り、癖のある客を呼び寄せているという。
おっこは美陽と鈴鬼に旅館の仕事を手伝う条件で春の屋にいることを認める。
旅館の仕事を手伝う条件で春の屋にいることを許可された美陽と鈴鬼
Story#3:夏
お客様に食事で健康になってもらう為「医食同源」について考える真月は、学校でおっこに医食同源について講釈し、秀才で努力家の真月の行動にクラスメイトも一目置く。
夏休みに入り、若女将として占い師水領のお世話をするおっこ。
当初元気の無かった水領だったがおっこのもてなしに元気を取り戻し、おっこをショッピングセンターに誘う。
水領の車に乗りショッピングセンターに向かうおっこだったが、車の中で事故の記憶がよみがえり過呼吸を起こしてしまう。
車を降り水領に事情を話すおっこは、水領に両親が生きてる気がしてしょうがないという。
落ち着いたおっこはついてきたウリ坊と美陽と共に水領とショッピングセンターに行き買い物を楽しむ。
帰り道、水領は失恋して落ち込んでいた事をおっこに話し春の屋を後にする。
ウリ坊、美陽、水領と共にショッピングセンターに向かうおっこ
Story#4:秋
秋になり、あかねの父が作家であり雑誌に紹介される春の屋。
雑誌を見て鈴鬼と話しをし、神楽の練習に向かうおっこ。
無視されたウリ坊と美陽に鈴鬼はおっこが二人を感じ取れなくなる日が近づいていると言う。
神楽の練習と若女将の仕事をこなすおっこは、毎日ウリ坊たちを探すも見つけられずにいた。
真月と神楽の練習をするおっこ。
中々上達しないおっこに苛立つ真月。
二人は激突し大喧嘩してしまう。
帰り道、ウリ坊と美陽を見つけたおっこだったが直ぐに見失ってしまう。
その日の夜、木瀬一家を迎える春の屋。
雑誌に載っていたおっこを見て喜ぶ一人息子の翔太。
長期入院していた父の文太の体の事もあり減塩低カロリーの料理を注文していた木瀬一家だったが、文太は病院食と変わらないと箸が進まない。
医食同源を踏まえてもう一度料理を考えると言う康之介さん。
おっこは真月ならいいアイデアを持ってるかもしれないと考え秋好旅館へ向かう。
木瀬一家を迎えるおっこ
秋好旅館で真月と会い、神楽の練習での喧嘩を謝罪し助けて欲しいと頭を下げるおっこ。
プライドはないのかと煽る真月だったが、おっこのお客様に喜んでもらう方が大事という言葉を聞きおっこに協力、食材とレシピを渡し車でおっこを送る。
車の中でおっこは鈴鬼から御神楽の日にウリ坊と美陽は天に上りお別れとなる事を告げられる。
春の屋は真月から教わった料理を木瀬一家に振る舞い、文太は大満足する。
料理を片づけるおっこに文太は生きてて良かったと家族で過ごす時間に感謝し、トラック運転中に目の前で起きた追突事故を避ける為に反対車線に飛び出し大事故になったと話しを始める。
文太が両親の亡くなった事故の加害者と分かったおっこは、心のどこかで生きていると思ってた両親が居ない事を痛感、号泣し部屋を出てウリ坊と美陽の名前を叫ぶ。
傍にいるのにおっこから姿が見えなくなったウリ坊と美陽もおっこの名を呼び号泣する。
号泣するおっことウリ坊、美陽
私を独りにしないでと泣くおっこ。
そこに胸騒ぎがして駆けつけた水領がおっこを抱きしめる。
おっこから話を聞く水領は、「おっこは独りじゃない。両親も見守っている」とおっこを励ます。
春の屋に泊まれないと考えた木瀬一家を秋好旅館に泊まらせるため真月が車で迎えに来る。
春の屋に泊まりたいと駄々をこねる翔太。
おっこはここに居ていいと翔太を抱きしめ、立ち去ろうとする木瀬一家を引き止める。
「花の湯温泉のお湯は神様から頂いてるお湯。誰も拒まない全てを受け入れて癒してくれる」と、両親と祖母から言われた言葉を語るおっこ。
文太はおっこに礼を言うが、自分が死なせてしまった関夫婦の一人娘であるおっこといるのが辛いと申し出を断る。
おっこは「いいえ、私はここの、春の屋の若女将です」と答え木瀬一家を春の屋に留める。
「いいえ、私はここの、春の屋の若女将です」と言うおっこ
Story#5:エピローグ
神楽の日、お清めをするおっこと真月。
真月はおっこに自分が生まれる前に亡くなった姉の声に励まされたことがあると語り会いたかったと涙する。
神楽を踊るおっこと真月。
その隣で一緒に踊るウリ坊と美陽は生まれ変わってまた逢えると告げ笑顔でおっこの前から姿を消す。
おっこと共に神楽を踊るウリ坊と美陽
最後に
両親が亡くなった事を心の奥で受け入れていなかったおっこ。
そのおっこが木瀬一家と出会い、両親が亡くなった事を受け入れ若女将として成長する様に感動する。
「花の湯温泉のお湯は神様から頂いてるお湯。誰も拒まない全てを受け入れて癒してくれる」この言葉がこの作品の主題であり、現実を拒まずに受け入れる事の大切さ、人を拒まない事の大切さをしっかりと描いた作品だと思う。
そして、両親が亡くなり独りになってしまったおっこを精神面で支えるウリ坊、美陽、鈴鬼。
彼らとの別れがおっこが成長した証しであり、明るくお別れするラストに心温かくなる。
スタッフロールが流れる一枚絵の中で、おっこの母が妊娠中に「私にもしもの事があったら赤ちゃん守ってね」と鈴鬼が封印されている鈴に語っているのが描かれており、ちょっとホロっとくる。
もの凄く感動して号泣するといった作品ではないが、「千と千尋の神隠し」的な心が温かくなりとても良くできた良作であると思う。